INTRODUCTION

人気アイドルユニットおやすみホログラムと幻の写真家・小野麻早がタッグを組んだ

異色のDVD付き写真集『オノホロ』。

この写真集制作のきっかけを作ったAV監督カンパニーの手記から。

(この手記は、写真集に収録されているものを一部改良、省略したものです)


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写真家 小野麻早 × おやすみホログラム

フォトセッション

世界の終わり(からの始まり)もしくは、ONOHOLOについて。


2018年2月、おやすみホログラム(以下おやホロ)のマネージャー小川さんから

「4月公開でMVを1本撮って欲しい」と連絡をもらった。

2017年4月に『帰り路』のMVを撮ったので、ちょうど1年ぶりの話だった。

僕は本来AV監督で、あまりMVは得意じゃないが、この話をもらった時、「あ、ちょうどいいかも」と思った。


その1ヶ月前、2018年1月、写真家の小野麻早さんが、僕の所属するハマジムに遊びに来た。

ハマジム代表であるカメラマン浜田に、営業なのか世間話なのか近状報告なのか、よくわからない話をしていた。

僕は最初、自分のデスクにいながら、なんとなく2人の会話を聞いていたが、どうにも小野さんの話が面白い。

「おふくろが亡くなって、疲れちゃって何もかもヤル気がない」とか、

「全然働いてない、生活保護を受けている」とか、文字にすると暗い話をなんだか朗々と楽しそうに喋っていた。


小野さんといえば、僕や浜田にとって一回り以上の先輩であり、メジャー週刊誌やらグラビア雑誌などで活躍した

敏腕カメラマンなのだが、昔からその人柄と作風は変わっていた。

一般的なグラビア誌では、その世界を見せないのだが、一部のグラビア誌やSM誌などで見せる写真は異質だった。

一応ヌードなのだが、レトロというかノスタルジーというか

古びた民家で、昭和30年代から40年代風の服を着たモデルがそこはかとなく佇んでいたり、いなかったり。

それをモノクロームでプリントして、さらにプリントの縁を燃やしたり、塗ったりしていた。

まるでエロとは程遠いアートみたいな写真を、マニアックなエロ本で発表していた。


(中略)


時を経て、僕は小野さんと浜田の会話に加わり、小野さんと初めてまともに喋った。

小野さんは現在、生活保護を受けているが、ネットは繋がっていて、ちゃんと現代に精通し、

まっとうな思考の持ち主だった。そして何より明るかった。

ヤル気が出ない病気(本人はうつ病とは違うと言っていて、薬も飲んでいるが、それ用ではないらしい)らしいが、

お喋りしてる小野さんからは、なんだか陽のオーラが出ていた。

単純に人として可愛くて面白かった。

その時、「この人のドキュメンタリーを撮りたい」と思った。


ただ、小野さんは写真家だ。ただの面白おじさんとして撮るわけにはいかない。

小野さんの写真現場を組みたいと思ったが、今のハマジムのラインナップでは無理だ。

どうしようかなーと、考えていたタイミングで、おやホロMVの話が来て繋がった。

小野さんに、おやホロの2人(八月ちゃんとカナミル)の写真を撮ってもらって、

それをMVとドキュメントにすればいいんだと。

なにより、おやホロの2人がフォトジェニック(古いな)だから浮かんだアイデアだった。


かくして、2018年4月、小野さんとおやホロの撮影が始まった。

場所は小野さんの得意とする古民家で、衣装はスタッフみんなで古着屋さんを回って集めた。

その様子の一部は、『世界の終わり』MVと一緒に公開し、今作に付属するDVDにもロング版ドキュメンタリーが

収録されているので見てください。


おやすみホログラム『世界の終わり』MV&写真集ドキュメンタリー予告


4月の撮影後、2018年9月の発売を目指して、写真集の制作に取り掛かった。

その過程で、小野さんを昔からよく知る本写真集のデザイナー佐々木さんから”ONOHOLO”というキャッチーなコピーと

デザインとが送られて来た。

オノホロ(小野麻早ホログラム)、まさにそうだ。

たぶん、小野さんはずっと、ずっと変わらずある世界を見つめている。

そこに未来はなくて、とっくに終わっているのだけど、小野さんにとっては終わりの始まりなんだろう。

(と、勝手に意味付けしておきます)

あとはこれを見てくれたみなさまの目に感謝(&おまかせ)するとして。


2018年 7月 AV監督 カンパニー松尾